年金分割制度が始まって10年経ちましたが、「離婚すれば自動的に夫の年金の半分が手に入る」とか「離婚後すぐに受給してもらえる」など誤った理解をしている人も少なくありません。このような勘違いをしたまま、いざ離婚となったとき路頭に迷うことがないよう、今一度、年金のしくみや分割制度についておさらいしてみましょう。
年金には、20歳以上60歳未満の全国民が加入する国民年金、民間企業で働く会社員や公務員などが加入する厚生年金(平成27年より共済年金は厚生年金に一元化)、上乗せとしての国民年金基金や厚生年金基金などがありますが、年金分割の対象になるのは厚生年金のみです。
したがって、配偶者が自営業だと国民年金加入ですので、年金分割はできないことになります。
年金の被保険者は第1号、2号、3号に区分され、民間企業で働く会社員や公務員などを第2号被保険者、第2号被保険者に扶養されている配偶者で年収が130万円未満の人を第3号被保険者、第2号と3号以外の自営業者や学生、フリーターなどが第1号被保険者となります。
本題の年金分割制度ですが、夫婦が離婚すれば将来受給予定の何割かをもらえる訳ではなく、婚姻期間中の厚生年金記録を当事者間で分割できるというもので、分割を受けた方は将来の年金受給額が増え、逆に分割された方は将来の年金受給額が減ることになります。
年金分割制度は2種類で、夫婦間の協議あるいは裁判の手続きによって分割割合を決めることができる合意分割と、第3号被保険者が相手方の了承なしに請求できる3号分割があります。3号分割の分割割合は2分の1と決められており、平成20年4月1日以降に第3号被保険者であった期間が対象となります。合意分割と3号分割は併用することができ、合意分割を請求した際、婚姻期間中に3号分割のできる期間が含まれている場合、合意分割と同時に3号分割の請求があったものとみなされます。
合意分割は基本的に夫婦の話し合いで分割の割合を決めていくものですが、夫婦によって分割割合の範囲が異なりますので、年金を分割するにあたっては、年金分割の対象となる期間や夫婦双方の標準報酬総額、按分割合の範囲などが記載された「年金分割のための情報通知書」が必要になります。この通知書は通常夫婦双方に届きますが、婚姻中であれば請求した側にしか届きませんので、水面下で準備を進めることもできます。