夫婦にはお互いの生活レベルが同等になるように助け合う生活保持義務があり、夫婦の資産や収入その他いっさいの事情を考慮して、婚姻生活に必要な費用(婚姻費用)を分担する義務があります。
したがって、別居中でも夫婦の婚姻関係が継続している限り、相手の生活を維持するために婚姻費用を分担しなければなりません。
配偶者からの暴力を避けるための別居や、離婚の協議中、裁判中の別居であっても婚姻費用分担の義務は生じます。
夫婦に未成熟の子供がいる場合、たとえ別居期間中でも子供の福祉が最優先されますので、婚姻破綻の責任の割合などに関係なく、子供に対する扶養義務は免除されません。
家を出て別居する際、自分の特有財産は自由に持ち出すことができますが、夫婦の共有財産、実質的共有財産を勝手に持ち出すと、離婚訴訟になった場合に不利になることも考えられます。
ただし、別居中に相手がこれらの財産を処分してしまうことも考えられますので、勝手に預貯金を引き出されたり、有価証券などを売却されそうな場合には、家庭裁判所へ財産の処分を禁止する仮の処分を申し立てることもできます。ただし、従わなかった相手には過料が処せられるだけで、強制力はありません。
別居して住所を移転すれば、法律上は住民票を移す必要があります。別居地が遠隔になれば、子供の転校の問題が生じます。
子供が転校を望んでいなければ、住民票を移しても学校によっては学区外からでも通学できるよう相談に乗ってくれます。もし住民票を動かせない事情がある場合でも、学校側に相談してみましょう。
子供の学校や、仕事先などの問題がなければ、経済的や精神的に支援の期待できる実家もしくはその近くのアパートなどが良いと思います。ただし、配偶者からの暴力を避けるための別居では、相手が逆上して乗り込んでくる可能性がありますので、婦人相談所や母子生活支援施設を利用するほうが安全であると思います。
また、頼れる実家や親族もなく、生活が困窮している場合にも同施設へ相談することをお勧めします。
別居の原因が自分にある有責配偶者からの離婚請求は原則認められません。
一方、別居期間が長期間におよび、夫婦に未成熟の子供がおらず、相手方が経済的・精神的・社会的に苛酷な状態に置かれることのない場合に、有責配偶者からの離婚請求を認める判例もあります。
ただし、一定期間の別居で離婚を認めるというものではなく、有責配偶者からの離婚請求が認められるのは簡単ではありません。
別居中に配偶者が異性と性的関係を持った場合に、不貞行為を原因として離婚請求をするならば、夫婦関係がすでに破綻しているとみなされないよう、別居中に「離婚」を口にするのは止めたほうが良いでしょう。不貞行為と夫婦関係破綻の因果関係が認められなければなりません。
また別居中、配偶者から勝手に離婚届を提出されそうな場合は、あらかじめ本籍地または住所地の市区町村役場へ不受理申立書を提出しておきましょう。