お互いの合意で成立する協議離婚や家庭裁判所の調停による離婚では離婚の原因は限定されませんが、裁判で離婚を請求するには法定離婚原因が必要となります。
民法に4つの具体的な原因と、1つの抽象的な原因が定められており、これらに該当する理由とその証拠がなければ裁判による離婚は認められません。
夫婦は互いに貞操を守る義務がありますので、これに反して不貞行為におよんだ場合はその不貞行為を理由として離婚の請求ができます。
なお、不貞行為を理由に離婚請求する側は、相手の不貞を証明しなければなりません。
夫婦は同居してお互いに協力、扶助する義務がありますが、どちらかがその義務を怠り、夫婦の共同生活が維持できなくなることを知りながら故意に放置することを、悪意の遺棄と言います。
具体的には、次のようなものがあります。
夫婦の別居は同居義務違反にあたり、悪意の遺棄にあたりますが、次のような場合の別居は正当な理由があるので一概に同居義務違反とは言えず、悪意の遺棄には当たりません。
婚姻を継続する意思がなく、遺棄の意思を持った別居が悪意の遺棄となります。
また、既に婚姻関係が破綻した後の別居は、別居自体が破綻の原因ではないので、悪意の遺棄には当たりません。
夫婦の一方が蒸発した場合、残された配偶者が将来を考えて再婚することは、決して不当なことではありません。
その場合、残された配偶者は婚姻関係を解消しなければなりません。
民法では行方不明から3年以上生死不明の場合、もはや婚姻生活は破綻したものとして離婚を認めています。
所在が不明でも、たまに電話や手紙などで連絡がある場合や、知人がその姿を見かけたなどという場合は行方不明であり、生死不明とは言いません。生死不明とは、生存の証明も死亡の証明もできない状態のことを言います。
3年の起算点は一般的には最後に音信があった時からとなります。
生死不明を原因として離婚訴訟を起こす場合には、調停を経ることなく訴訟を起こすことができます。裁判では警察への捜索願いなど、あらゆる手をつくして探したが見つからなかったという証拠が必要となります。
判決が確定すれば、その後本人が姿を現わしても判決が取り消されたり無効になることはありません。また、蒸発した配偶者の財産に対して財産分与の請求ができます。
なお、生存が確認されるものの、所在が不明で仕送りなどもない場合には、「悪意の遺棄」または「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当すると判断され、3年待つ必要なく離婚事由として認められる場合もあります。
夫婦はお互いに協力、扶助する義務がありますが、一方が強度の精神病になった場合、配偶者には経済的にも心理的にも多大な負担がかかります。
民法では夫婦の一方が強度の精神病で、回復の見込みがなければ離婚を認めています。
ただし、夫婦としての精神的なつながりがなくなり、同居・協力・扶助の義務を果たせない程の精神病に限られます。
最終的には専門医師の診断を参考に、裁判所が判断することになります。
なお判例では、離婚後は誰が看病するのか、治療費は誰が負担するのかなど今後の具体的な方策がなければ離婚は認められないとしています。
離婚が認められる高度の精神病には、次のものが挙げられます。
ノイローゼ、ヒステリー、神経衰弱、アルコール中毒などは精神病に属さないと解釈されています。
夫婦関係が破綻して修復の見込みがない場合、離婚するために必要な事由のことです。これに該当する事項は非常に抽象的なものが多いため、個々の事情を裁判官が判断します。
おもな事由として次のようなものが挙げられます。
なお、1つでは離婚を決定する事由として弱い場合もありますが、複数の事由が重なることで夫婦関係の修復が不可能と判断され、離婚が認められることもあります。