夫婦の話し合いがまとまらない場合には、離婚を望む夫婦の一方が、 管轄の家庭裁判所へ離婚調停を申し立てる事になります。 離婚などの家庭の問題については、いきなり裁判を起こすことはできず、 訴訟の前に必ず調停の申立をしなければなりません。(調停前置主義)
家庭裁判所という名称から、裁判で判決を下すところ、または怖い場所という印象を受けて、 不安に感じる方もいらっしゃると思います。 そのような不安がある方は調停を申立てる前に、家庭裁判所の「家事相談室」 のご利用をお勧めします。家事相談では、調停申立ての方法、申立てに使用する書類についての説明、 または家庭環境の調整やアドバイスをしてくれます。 なお、この家事相談は無料です。
調停離婚の場合は、必ずしも法定離婚原因を必要としません。 また、離婚原因をつくった有責配偶者からも調停の申立てが可能です。
家庭裁判所に「夫婦関係調停申立書」を提出します。
「夫婦関係調停申立書」は全国の家庭裁判所の窓口に置いてあり、無料でもらえます。
申立書には申立人および相手方の本籍地、住所などを記載します。
申立ての趣旨の欄は円満調整と夫婦関係解消に別れており、どちらかを選択します。
養育費、財産分与、慰謝料の希望金額について必要があれば記載します。
申立ての実情の欄には、夫婦関係が不和となった事情や、その後のいきさつなどを記載します。
最後に申立ての動機を、1.性格が合わない 2.異性関係 3.暴力を振るう 4.酒を飲みすぎるなどの
例示が記載されていますので、あてはまる番号を○で囲む形式になっています。
申立費用は、各家庭裁判所によって若干違いますが、 申立書に貼る印紙代が約1,200円、呼び出し通知の切手代が約800円です。 後は夫婦の戸籍謄本が1通450円、住民票200円が必要です。
調停の申立てが受理されると、家庭裁判所から約1ヶ月ほどで第1回目の
調停期日呼び出し状が送られて来ます。
封筒の差出し人は「私書箱○○号」となっていますので、家庭裁判所からの
郵便物と分からないようにして届けられます。
呼び出しを受けた相手方が、正当な理由もなく調停に出頭しない場合、 過料の制裁があります。 それでもなお相手方が出頭を拒めば、調停は不成立となってしまいます。 その場合は、裁判にて離婚を求める事となります。
家庭裁判所では調停委員会(家事調停委員2名、裁判官1名)が、夫婦双方から
事情を聞きながら、夫婦がお互いに合意して解決できるように仲裁してくれます。
離婚という解決方法だけではなく、夫婦関係の円満調整のための調停も行われています。
調停は調停室において調停委員会と当事者がテーブルを囲んで話し合うスタイルとなります。
当事者双方が同席していると話しにくいこともあるので、夫婦別々に事情を聴き、
お互いのプラーバシーを保護します。
調停をスムーズに進めるためにも、離婚原因の参考となる資料や、どのような問題で離婚に
至っていないのかなどの詳細を記述した上申書の作成・提出をお勧めします。
夫婦間の問題を解決するための調停ですので、当事者本人が出席しなければなりません。 ただし、本人が病気や仕事などの都合でどうしても出頭できない場合には、 代理人許可申請(弁護士の場合は「代理人選任書」、親兄弟の場合は「代理人選任書兼承認申請書」) を提出し、弁護士や親兄弟が代わりに出頭することも可能です。 ただし、調停成立の時には必ず本人が出頭しなければなりません。
調停を取り下げたければ、いつでも取り下げは可能です。 家庭裁判所に「取下書」を提出するだけです。取り下げる理由なども必要ありません。
調停は当事者の合意を前提とするので、1回の調停で成立することはまれであり、 お互いの合意を得るまで、1ヶ月程度の間を置き、何回か繰り返されます。
調停での話し合いで双方とも離婚についての合意ができ、調停委員会も離婚をしたほうが妥当と 判断した場合には、調停調書を作成して調停が成立します。 調停調書は確定した判決と同じ効力を持ちますので、後から不服を申立てることはできません。
調停成立の日から10日以内に本籍地または住所地の市区町村役場に、離婚届と 調停調書謄本を提出すれば離婚が成立します。 協議離婚と同じ離婚届を提出しますが、証人の欄の記入は必要ありません。 また、調停の申立人でない側の署名押印もいりません。
調停が繰り返し行われたにもかかわらず、夫婦のわずかな考え方の相違で合意に達しない場合や、
調停成立寸前で夫婦のどちらかが出頭義務に応じない場合には、
家庭裁判所は調停委員会の意見を聴いて、独自の判断で離婚の処分をすることができます。
これを「審判離婚」と言い、夫婦双方の利益になると判断したときに行われます。
ただし、調停が不成立になると離婚訴訟を提起するか、いったん離婚を断念するケースが多く、
審判離婚はあまり利用されていない制度です。
いつまでも夫婦の意見が合意に至らず対立を続け、これ以上調停を長引かせても 解決方法が見出せないと判断した場合は調停不成立となります。 調停不成立となり、法定離婚原因のある場合は家庭裁判所に提訴することができます。