親権とは、未成年の子を養育し、子の財産を管理する親の権利・義務のことです。
身上監護権と財産管理権を合わせて親権といいます。
身上監護権とは、子供の生活全般を世話し、しつけ・教育などの指導をおこなう権限です。
財産管理権とは、子供の財産を管理し、契約などの法律行為を代理する権限です。
婚姻中には夫婦が未成年の子供の共同親権者となりますが、離婚する場合はどちらか一方を単独親権者に定めます。離婚届に親権者の記入事項がない場合には、離婚届が受理されません。
夫婦のどちらが親権者になるか協議でまとまらなければ、家庭裁判所へ親権者指定の調停の申し立てをすることになります。調停が不成立に終われば、審判へ移行します。
なお、裁判離婚では裁判所が職権で父母のどちらかを親権者と定めます。
親権者は基本的に夫婦の話し合いで決めますが、お互いのわがままや意地の張り合いで決めるべきではありません。
浮気など離婚の原因をつくった責任のある配偶者だからといって、親権者になれないわけではありません。
子供にとってどちらの親に育てられたほうが経済的、精神的に安定した生活を送れるかを最優先に考えるべきです。
もっとも、子供が乳幼児の場合には、母親と一緒に生活するほうが保育のうえで自然であると考えられているため、8割以上は母親が親権者となっています。
子供の発育状況に応じて本人の意見が尊重され、15歳以上の場合は子供の意見を聴く必要があります。ただし、子供に親権者の決定権があるわけではありません。
子供が複数いる場合には、それぞれの子供に対して親権者を決めていきますが、すべての子供が低年齢の場合は、兄弟姉妹が共に暮らしたほうが人格形成の面からも良いであろうと判断され、一方の親に親権を統一することを原則としています。
妊娠していた母親が離婚後に出産した場合、親権者は母親になります。ただし、出産後に協議により親権者を父親に変更することはできます。
親権者が死亡した場合、後見人を選任する必要があります。
未成年の子供の後見人は、親権者の遺言で指定された者か、指定がなければ子供の親族などの請求によって家庭裁判所が選任することになります。
なお、生きているもう一方の親は、家庭裁判所に親権者変更を申し立てることができます。
一度決めた親権者を、離婚後に変更することは容易ではなく、たとえ父母の間で変更についての合意ができていても、家庭裁判所の調停または審判の手続きをとらなければなりません。
変更の申立ては父母やその親族、さらに児童相談所の所長にもその権利がありますが、子供自身が申立てをすることはできません。
親の身勝手な都合や無責任な考えで変更できるものではなく、親権者の心身や経済状況に何らかの変化があり、子供の養育・教育義務を果たせない場合などに限られ、子供の福祉に必要であると家庭裁判所で判断されれば変更が認められます。
家庭裁判所で変更が認められた場合、審判の確定または調停成立の日から10日以内に調停調書もしくは審判書の謄本を市区町村役場の戸籍係へ提出し、子供の親権者欄を書き換える必要があります。