一般的には子供を引き取り育てる親が親権者と監護者を兼ね、離婚届に親権者を記載します。
もし、親権者と監護者を別々に定める場合には、どちらが監護者になって子供を監護教育するのかを離婚協議書に記載しなければなりません。
なお、親権者と監護者を別けない場合にも、確認の意味で離婚協議書に記載したほうが良いでしょう。
財産分与と慰謝料とは別個の権利ですが、現実の財産分与の支払いは、慰謝料と明確に区別せず、合算する場合もあり、財産分与は慰謝料の性格も持つ事もあります。
家庭裁判所の財産分与の統計も合算しており、一般的なサラリーマンでは、財産分与と慰謝料を合わせて、200~500万円が相場のようです。
だからといって、常に財産分与に慰謝料が含まれているわけではありません。
財産分与に慰謝料が含まれているのかどうかは、離婚協議書にきちんと明記しておきましょう。
一番良いのは、現金の一括払いで支払う(受取る)方法です。
分割払いにすると、初めは支払うが、支払われなくなる可能性が高く、再度の請求手続きも手間がかかります。また、分割払いだと支払いが終わるまで相手との関係も切れずいやなものです。できるだけ一括で支払ってもらえる金額にした方が良いと思われます。分割払いの場合でも、初回の金額を多めに設定した方が良いでしょう。
慰謝料も財産分与も請求できる期間が決まっています。
財産分与請求権については離婚成立時から2年以内。
慰謝料請求権については離婚成立時から3年以内です。
その期間を過ぎると時効により請求できなくなります。
また財産をもっている方は、財産を隠したり処分したりと、少しでも相手方に譲渡しない場合が多く、いったん離婚が成立した後は、話し合いにもなかなか応じてくれません。
できれば離婚成立前に、財産分与と慰謝料などの金銭問題は解決しておいた方が良いでしょう。
子供の養育費は、財産分与と慰謝料とは根本的に性格が違う別の権利です。
養育費の基準額はありませんが、毎月かかる衣食住・教育費・医療費・娯楽費などが含まれ、親と同程度の生活水準が目安となります。
一般的には、子供一人当たり月額2~4万円、二人の場合は4~6万円が平均的な金額です。また、子供が大きな病気、事故、その他の大きな出費が発生した場合は、双方が半額を負担する旨などを最初から明記しておいた方が良いでしょう。
平成○○年○○月から、子が○○歳に達する日の属する月まで、毎月○○万円ずつ、毎月○○日までに、指定した金融機関の口座に振込み送金して支払ってもらうか、必ず離婚協議書に明記しましょう。
養育費の支払いは大半が毎月の分割払いです。しかし、養育費は約束しても途中で支払われなくなることが多いのが現実です。特に相手が再婚した場合は不払いがちです。
毎月の分割払いの場合、支払いが停滞した場合の措置(遅延利息等)も離婚協議書に記載しておきましょう。
養育費を支払う側に、養育費の総額を一括払いができる資力がある場合は、全額を現金で前払いしてもらう方が良いでしょう。
支払う側の資力に問題がある場合でも、相手が約束を守らないような性格で、途中で支払われなくなる可能性があれば、受取る額が低くても、一括で受取るほうが結果的には良いと思われます。
また、一括で養育費をもらっていても、支払う側に養育費の追加を請求することはできないわけではありません。たとえ、養育費の総額に父母間が合意していても、その後の養育事情に変更があったと認められる場合は、養育費の追加請求ができるとされています。
毎月の養育費の支払い額は少なくなるが、それをボーナスで補填する方法です。
ただし、養育費を支払う側の収入が安定しており、ボーナス期に一定額の支払いが可能な場合に限ります。
離婚協議書には平成○○年○○月から、子が○○歳に達する日の属する月まで、毎年○○月と○○月(ボーナス期)に別途○○万円づつ支払う旨を記載します。
子供が成長するに伴って、当然養育事情も変わってきます。
子が高校に進学した時は、毎月の養育費を○○万円増額、大学に進学した時は、○○万円増額といった具合に進学に伴う学費の出費を、予め合意しておく方法です。後で養育費の増額変更でもめない為にも、子供の進学年齢に合わせた養育費の増額を、離婚協議書に明記しておくと良いでしょう。
養育費の振込み先については、実際に子供を引き取り育てる側である、親名義の口座に振り込んだ方が良いという考えもありますが、養育費は子供を引き取り育てる親に支払うものではなく、別れた未成年の子供に支払うといった趣旨から子供名義の口座を開設して、そこに振り込む方法が良いと思われます。
離婚協議書で、予め養育費の免除または減額を、取り決める方法です。このようなケースは稀ですが、子供を引き取り育てる側が、将来再婚し、再婚相手と子供が養子縁組した場合のみ有効です。(再婚相手が養親となり、子供を引き取り育てる親と共に、子供の共同親権者となる場合)
しかし、再婚相手が経済力が劣っている場合は、子供は生活保持義務の考え方から別居した親が扶養義務者となり、養育費の支払いを再開、増額しなければなりません。
子供は生活レベルが高い方の親と同水準の生活を別居した親に求めることができます。当然ですが、離婚協議書での合意もなく、再婚や養子縁組をしただけでは、別居した親の養育費の支払義務がなくなるわけではありません。
また、離婚協議書で「養育費を今後一切請求しない」といった扶養請求権の放棄を父母間で合意しても、不適法な合意とされ、扶養請求権の処分は禁止されています。たとえそのような記載があっても、養育費は子供の権利ですから、子供は別居した親に扶養を請求することが出来ます。
養育費の支払い(受取り)期間中に、予期していない病気やけがにより、子供の養育に必要な医療費などが増大する場合は、養育費を増額請求できるといった取り決めを、予め離婚協議書に盛り込んでおく方法です。
しかし、養育費を支払う側に、それに応じるだけの経済的余力があることが条件となりますので、そのような事態が起こった時は、お互いが誠意をもって、協議することが必要だと思われます。
記載例 甲(子を引き取り育てる側)乙(子を引き取らなかった側)
子○○が病気や大きなけが、その他の事由により、特別の出費した時は、甲乙間で誠意をもって協議し、乙は甲の請求により、直ちにその費用を支払う。
一般的には子供を引き取り育てる側が親権者と監護者を兼ねていますが、別に立てることも可能です。また、親権者は離婚届に記載されますが、監護者は離婚届に記載されませんので、必ず離婚協議書に、どちらが監護者になり子供を監護養育するか記載しなければなりません。
親権者と監護者と別々に定める場合の記載例
甲乙間の未成年の子○○の親権者を甲と定め、監護者を乙と定め、乙が子○○を引き取り監護養育する。
子供の面接交渉権については、離婚後にトラブルになる場合が多いので、なるべく離婚前に子供との面接の日時、場所、方法など具体的に協議し、離婚協議書に記載した方が良いと思われます。
また、夏休みなどに宿泊を伴う面接交渉や、子供への連絡方法(手紙、電話、メール)なども取り決めておいた方が良いでしょう。
記載例 甲(子を引き取り育てる側)乙(子を引き取らなかった側)
甲は乙に対し、乙が1ヶ月に1回、子○○と面接交渉することを認める。
乙は甲の事前の承諾なしには子○○と面接交渉しないものとする。
面接交渉の日時、場所、方法は、子の福祉を害することがないよう甲乙は互いに配慮して協議決定する。
清算条項とは、離婚協議書に記載した内容以外のお金や財産は請求しないこと、または支払わないことを確認するものです。
子供の面接交渉権について、離婚後トラブルになる場合が多いので、できるだけ離婚前に面接の日時、場所、方法などを具体的に取り決めて、離婚協議書に記載することをお勧めします。
面接交渉権は子供の福祉を優先するものですから、お互いが配慮して協議決定しなければなりません。